免疫力を高める生活習慣
![免疫力を高める生活習慣](../immunity/images/immunity-3.jpg)
血液循環や発汗など、自分の意志で動かすことのできない器官をコントロールする自律神経は、免疫機能もつかさどっています。自律神経のなかでも、体を活性化する働きがある交感神経はおもに「顆粒球」の働きを、体をリラックスさせる副交感神経は「リンパ球」の働きを支配しています。
自律神経は、交感神経と副交感神経がタイミングよく切り替わることで成り立つもの。でも、どちらかが優位になりすぎると、体調がくずれる原因になってしまいます。免疫機能がきちんと働くためには、交感神経と副交感神経がバランスよく働く必要があるのです。
安全と健康を守るために小まめに手を洗い、他人との接触を避けるようにしましょう。大変な時期を皆で乗り越えましょう!
あなたはどちらのタイプ?
免疫力は、自律神経のうち、交感神経・副交感神経のどちらが優位になりすぎても、低下してしまいます、免疫力に自信のないあなたは、どちらのタイプ?
交換神経過剰のパワフルタイプ
- いつも忙しく動き回っている
- やせぎみ
- ストレスが多い
- 風邪をひきやすい
- 食欲があまりない
- せかせかした性格
心と体への多大な負担から「リンパ球」の働きが悪化
生活が忙しく、過度のストレスを感じると、常に交感神経の優位な状態が続き、交感神経に支配されている「顆粒球」が「リンパ球」より増えすぎた状態になってしまいます。そうなると、免疫細胞の精鋭部隊である「リンパ球」がしっかり働けません。
いくら「顆粒球」ががんばっても、攻撃力が強いウィルスなどには抵抗しきれないので、頻繁に風邪をひいたり、症状が長引いてしまうことに。胃潰瘍などの病気で悩まされることもあります。 さらには、将来的にがんやウイルス性肝炎などにかかるリスクが上がることも、考えなければなりません。
交換神経過剰のパワフルタイプが免疫力を高めるには
このタイプの人は、忙しすぎる生活を見直し、リラックスタイムを設けて、副交感神経を優位にする時間をつくる必要があります。入浴や軽い運動で気分転換を心がけましょう。睡眠も7~8時間、きちんととるようにします。
また、風邪ぎみなどの不調に気づいたら、早めに休むことも免疫力を保つためには大切なポイントです。
副交感神経のゆったりタイプ
- 体が動かす機会がない
- 太りぎみ
- 性格がのんびりしている
- 生活にメリハリがない
- アレルギーで悩んでいる
- 傷跡が残りやすい
体を甘やかしたことから『顆粒球』が手薄に
免疫機能がきちんと働くためには、「顆粒球」と「リンパ球」がほどよい割合で働く必要があります。でも、毎日だらだら過ごして体を甘やかしていると、副交感神経ばかりが優位な状態に。そうなると、副交感神経に支配されている「リンパ球」が増えるいっぽうで、「顆粒球」が減ってしまいます。
外敵と闘うパトロール隊の「顆粒球」が手薄になるため、「リンパ球」は「顆粒球」の役割も果たさなければなりません。いくら精鋭部隊の「リンパ球」でも、「顆粒球」のバックアップがなければ、次から次へと侵入してくる外敵に抵抗する働きには限界があります。
その結果、免疫力が低下してしまうことがあるのです。また、増えすぎた「リンパ球」の影響で、アレルギー反応が強く出てしまうこともあります。
副交感神経のゆったりタイプが免疫力を高めるには
このタイプの人は、適度な運動を取り入れて交感神経を刺激し、生活にメリハリをつけることが必要です。毎朝、起きたらすぐに軽い体操をしたり、昼間、散歩をしたり、体を積極的に動かしましょう。朝、しゃきっと起きて交感神経を目覚めさせるために、夜更かしを避け、規則正しい生活に変えることも大切です。
免疫力を高める運動
![免疫力を高める運動](../immunity/images/immunity-8.jpg)
体の免疫力を上げるためにも、適度な運動は必要です。軽いウォーキング、あるいは室内できる簡単な筋トレなど、一日30分~1時間程度の運動を習慣にして体の免疫力をあげましょう。
体は常に温かく
体温が上昇して血行がよくなると、免疫細胞が体の隅々まで届きやすくなります。また、内臓は36℃後半で機能を発揮すると言われており、効率的に栄養吸収をして免疫を高めるためにも、体を温めましょう。
免疫がかかわる私たちの体調の変化
![免疫力チェック](../immunity/images/immunity-4.jpg)
免疫は自律神経を通じて、体のいろいろな変化と深くかかわっています。 なかにはちょつと意外な働きにも関係することが。 ここでは、免疫と体調の変化との関係を探ってみましよう。
1. 風邪のひき始めは、「リンパ球」が大活躍
おもにウィルスが原因で起こる風邪をひいたときは、「リンパ球」が中心になって活躍します。ウィルスが入ってくると、体を休ませようと副交感神経が優位になり、「リンパ球」をたくさん出動させて闘うので、風邪のひき始めには発熱して体がだるくなり、さらさらした鼻みずが出るのです。
また、気がはっているときに風邪をひきにくいのは、交感神経が優位なものの、なんとか自律神経のバランスがとれているから。でも、自覚はなくても疲れがたまり、「リンパ球」の数も減りぎみです。そのせいで、気が抜けたとたん、ウィルスに抵抗できなくなり、風邪をひくこともあるのです。
2. 傷の治り方にも影響する免疫力のバランス
けがをしたり、潰瘍ができたときの傷の治り方にも、免疫力のバランスが大きく影響します。副交感神経が優位すぎる人は、「顆粒球」の数が少なく、「リンパ球」が増えすぎた状態に。
そのため、「リンパ球」が持つ傷を治す力が強く働きすぎて、傷の治りかけに強いかゆみを感じたり、傷跡がケロイドとして残りやすくなります。 一方、交感神経が優位すぎる人は、「顆粒球」が多すぎる状態。「顆粒球」が必要以上に働くことで、いつまでも傷口が化膿した状態になって、傷の治りが遅くなることがあるのです。
3. 免疫力の低下ががんの遠因に
免疫機能は、常に体に害を及ぼす敵を監視しています。敵は外から侵入してくるだけではありません。体内にある細胞が異常に増殖したときも、敵となって体を攻撃してきます。この体内から生まれる敵の代表が、がんです。
免疫機能が正しく働いているときは、がん細胞のもとがつくられても、すぐに正常な状態に戻すように働きます。でも、なんらかのきっかけで免疫力が低下すると、がん細胞が増殖しはじめます。この増殖を抑えているのは、おもにT細胞、NK細胞などの「リンパ球」。ストレスによって交感神経が緊張状態になると、「リンパ球」が減少します。そのため、過度なストレスが続くと、がんのリスクが上がるといわれるのです。
4. アレルギーは敵を排除する働きが強すぎる状態
免疫は体を守るために必要な働きですが、過剰に働くと、体に無害なもの、さらに必要なものまで排除しようと働くことがあります。これが、アレルギーです。
アレルギーを起こす体質かどうかは、親から受け継いだ遺伝子の影響が大きいのですが、アレルギー反応が強く出るかどうかには、その人の免疫状態が深くかかわってます。アレルギーとの関係が深いのは、免疫物質の中の「リンパ球」。これを支配する副交感神経が優位になりすぎると、アレルギー反応も強く出ることがあります。
5. 妊娠中は免疫の環境も大きく変わる
大切なおなかの赤ちゃんも、お母さんの体にとっては異物。でも、お母さんの免疫機能が、他者である赤ちゃんを攻撃することはありません。妊娠すると、交感神経が徐々に優位になり、「顆粒球」が増えるいっぽうで、「リンパ球」の数が減っていきます。
そして出産後、数日たつと、正常な免疫の環境に戻ります。妊娠中は、自分の体には存在しない異物を記憶し、排除する働きがある「リンパ球」が減ることで、赤ちゃんを異物として認識しにくくなる環境がつくられるのです。
妊娠すると、風邪をひきやすくなったと感じる妊婦さんは多いのですが、実は、ウイルスに対抗する「リンパ球」が減ることが、風邪のかかりやすさにも影響しているのです。
6. 間違って自分を攻撃するのが自己免疫疾患
免疫は、自分自身の体とそれ以外のものを区別して働いています。ところが、免疫が間違って働くようになり、自分の体を攻撃してしまうことがあります。
これが、慢性関節リウマチ(全身の関節が痛み、ときには変形してしまう病気)などの自己免疫疾患です。アレルギーとよく似てますが、アレルギーが体の外から入ってくる異物を攻撃するのに対し、自己免疫疾患は、自分の体内にあるものを異物として攻撃してしまうもの。
自己免疫疾患がなぜ起こるかはまだはっきりわかっていませんが、過剰なストレスが、免疫機能をつかさどる自律神経のバランスをくずすからではないか、などといわれています。
Medically reviewed by
-
Sachiko Mitarai, MD
免疫機能は、身体を健康に保つ力です。しかし、ストレスが過剰になったり生活習慣が乱れたりすると、正常に機能できなくなります。 免疫が正常に機能するための鍵となるのは、自律神経がバランスよく働いているかどうかです。