男性不妊の割合と原因は?

男性不妊割合
男性不妊の割合と原因は?

WHO(世界保健機関)の調査によると、不妊症の原因は41%が女性のみ、24%が男性のみ、11%が原因不明となっています。 つまり男性に不妊症の原因が見つかるカップルが約48%となり、男性不妊の割合は約5割になります。

平成27年度におこなわれた厚生労働省の男性不妊調査によると、主な男性不妊の原因別の割合は造精機能障害(精巣の障害のために精子を作りづらい)82.4%、性機能障害(EDや射精障害)13.5%、精路通過障害(精子の通り道がなんらかの原因でふさがっている)3.9%とされています。

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夫婦の8組に1組の割合で不妊

統計上はおよそ8~10組に1組の夫婦が不妊症だと考えられています 非常に多くの夫婦が不妊の悩みを抱えているのです。 一般に男性は不妊治療に対して非常に消極的といわれています。 男性側の問題は、射精障害やED(勃起不全)などセックスのときに自覚できるものを除けば、病院で検査を受けて初めてわかることが多いです。

結婚して数年、なかなか子どもができないという人の中には、「妻に問題があるのか?それとも自分に?」と漠然とした不安を抱いている方も多いと思います。 実際、不妊カップルの中には、女性が積極的であるにもかかわらず、男性側か検査を嫌がるために受診が遅れたり、治療に通って数年してから男性不妊が判明した……というケースは少なくないそうです。

「もっと早く受診すればよかった」ということにならないように男性は、原因が自分(男性)にある可能性は約5割という現実を、知っておいたほうがよさそうです。

男性不妊の原因の第1位は乏精子症(ぼうせいししょう)

乏精子症は精液中に精子はいるものの、その数が少ないという症状
精液検査の精子濃度が1500万/ml未満の場合、乏精子症と診断されます。乏精子症の主な原因は精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)、造精機能障害(ぞうせいきのうしょうがい)、原因不明です。

精索静脈瘤は、精巣の静脈が逆流して瘤状に肥大する病気でこの瘤により精巣温度が上がり、精子をつくる能力が低下します。男性不妊の約40%に見られるそうです。 また精索静脈瘤は少しずつ進行していくため、一人目は順調に妊娠できても、二人目の頃には悪化し、二人目不妊の原因になっている場合もあります。

精索静脈瘤のセルフチェック

  • 左右の陰嚢に違いがある(モコモコした感じがある)
  • 長時間座った時とき、陰嚢に痛みがある
  • 脚を組み替えたときに左の精巣部分に痛みや違和感がある

乏精子症、精索静脈瘤の治療法は?

治療には羂索静脈が逆流しないように精巣静脈を縛る手術があります。この手術によって約50~70%の方の精液所見に改善がみられ、女性に不妊要因がなければ約30%以上で自然妊娠が可能だという報告もあります。 また軽度の精索静脈癌の治療はコエンザイムQ10 や L -カルニチンなどの抗酸化作用のあるサプリメントが使われています。

男性不妊の原因の第2位は無精子症(むせいししょう)

精液検査を行うと「精子がない」という状態が無精子症です
無精子症の主な原因は造精機能障害、鼠径(そけい)ヘルニア手術、精巣上体炎(せいそうじょうたいえん)、先天性精管欠損(せいてんせいかんけっそん)です。 無精子症とひとことで言っても、造精機能に問題があるケースと精路通過に問題があるケースには違いがあります。

造精機能に問題がある無精子症は精巣で精子がつくられていないことから起こるそうです。 精路通過に問題がある無精子症は精子の通り道に問題があるために精液中に精子が認められないだけで精巣で精子はつくられています。 そのため精巣内から精子を回収する手術をした際、精路通過障害(せいろつうろしょうがい)の方は精子が見つかる率も高くなります。

無精子症のセルフチェック

  • 精巣の長径が3cm以下
  • 精巣が腫れたことがある
  • 性病にかかったことがある

無精子症の治療法

無精子症の代表的な治療法が精路再建術(せいろさいけんしゅじゅつ)です。閉塞している箇所を繋いで精路を開通させる手術のことで、 鼠径ヘルニアやパイプカットなどの場合に適応します。 不妊治療では、射精精液中に少しでも精子が見つかれば 顕微授精で妊娠ヘチャレンジする方法を選択することが多いようです。 精路再建術によって精子が十分に出るようになれば、女性に不妊原因がない限り自然妊娠が可能になり、不妊治療の負担がなくなります。

男性不妊の原因の第3位は精子無力症(せいしむりょくしょう)

前進する精子が40%未満の場合、無力精子症(むりょくせいししょう)と診断されます
精子の運動性には、前進、旋回、振り子などがありますが、問題となるのは前進する精子がどれだけいるかということです。 前進する精子が少ないということは、卵子へ到達する精子が少ないということ、また到達しても尾が振れず、卵の透明帯を通過できないということへつながり、受精障害の要因となります。

精子無力症の主な原因は先天的な異常、前立腺の炎症、精巣の炎症です。おたふく風邪や高熱による精巣の炎症、また精嚢や前立腺などの副性器に炎症がある膿精子症(のうせいししょう)を併発していることもあります。 しかしこのような後天的な原因よりも、ほとんどは先天的なものだといわれ、体外受精や顕微授精が適応となることもあります。

精子無力症のセルフチェック

  • 思春期以降におたふく風邪になったことがある
  • 乳児期に停留精巣の手術をしたことがある

精子無力症の治療法

精子の質の改善が大切で、ビタミンE、コエンザイムQ10のサプリメントや漢方薬を服用します。妊娠には人工授精を行い、それでも難しければ体外受精なども考えられます。

男性不妊の原因の第4位は勃起障害(ED)

十分な勃起が得られないか、または維持できないために満足な性行為を行えない状態を勃起不全(ED)といいます
勃起不全(ED)は、ストレスなどが原因で起こる心因性のものと糖尿病や骨盤内手術後などに起こる器質性のものがあり、これらにはバイアグラなどの服薬によって性生活を取り戻すことが期待できます。 マスターベーションは可能ですが、性交渉のときはダメというパターンも多いです。典型的な例は男性が性交渉に 神経質になっていることです。

妻から「今日は子どもを作る日」「今日でないとまた 来月になってしまう」などと言われると、途端に状態が悪くなります。 勃起は副交感神経が興奮して初めて可能になるのですが、それに水を差されると一気になえてしまいます。 そんな状態が継続すると、EDに陥ります。性交渉するときはとにかくリラックスした状態がいちばんよいです。

勃起不全(ED)のセルフチェック

  • 「今日は排卵日」と言われると、気が重くなる。
  • 今度も失敗したらと不安がよぎる
  • 糖尿病を患わっている

勃起不全(ED)の治療法

EDの治療にはリラックスした雰囲気を作ることがいちばん。ただ、ここ数年はED治療薬の「バイアグラ」も浸透しており、有効性は高いといわれています。

最近増えている男性不妊の原因、奇形精子症(きけいせいししょう)

正常な形の精子が4%未満の場合を奇形精子症
精子の奇形は、頭部の大きさや形、尾部の形や本数などがあり、男性ならどなたにもあるものですが、正常な形の精子が4%未満の場合を奇形精子症といいます。

奇形精子症と診断されても、自然妊娠が不可能というわけではありませんが、特に頭部に奇形を持っている割合が多い場合などには妊娠率が下がる傾向にあるため顕微授精が対象になります。 その際にできる限り形態のよい運動精子を選ぶことで受精、妊娠が可能になります。

また「精子に奇形がある=奇形児、障害児が生まれる」ではなく、あくまでも精子の形態異常をいいます。

奇形精子症のセルフチェック

  • 過度のストレスがある

奇形精子症の治療法

人工授精で妊娠しなければ、できるだけ形が正常な精子を選択して顕微授精を行います。ホルモン治療、サプリメントや漢方薬が処方されることもあります。

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膿精液症(のうせいえきしょう)

精液lml内に100万以上の白血球が存在する場合、膿精液症と診断されます
膿精液症はクラミジア感染、結核菌などにより精路のどこかに炎症を起こしたことが原因で、精液中の白血球数が増え、精子の運動率を低下させ、受精困難となります。 抗生物質などを服用することによって精液中の白血球数が減少していきます。 膿精液症の場合、体外受精をしても受精率が低く、また胚盤胞への到達率が低下するという報告もあり、体外受精、顕微授精を行なう場合には、膿精液症の治療を十分にする必要があります。

染色体異常(せんしょくたいいじょう)

染色体の異常による不妊治療は、いろいろな難しい問題を含んでいます。染色体異常による無精子症であってもTESE(精巣内精子採取術)により精子が回収できれば妊娠に至るケースもあります。 しかし根本的に染色体異常を治療することはできないため、精子が採取できても、妊娠に至らないこと、またその遺伝的な問題を完全にクリアすることはできません。

染色体には、性染色体と常染色体があり、性染色体異常による不妊原因にクラインフェルター症候群があります。 過剰なX染色体を持ち、精巣の萎縮、女性のような乳房、無精子症などが特徴的で、外性器の発達はほぽ正常です。TESE(精巣内精子採取術)の成功率は30代前半までが高いようです。 また常染色体上の転座(染色体の数には異常はなく、一部で入れ代わっている状態)が認められる場合は、不妊よりも不育症が心配されるケースです。

逆行性射精(ぎゃくこうせいしゃせい)

精液が外尿道口より射精(順行)されず、膀胱に逆行すること逆行性射精といいます。性行為も正常に行なえ、射精感もあるにもかかわらず射精された精液が少ないことから、十分な射精感のあったマスターベーション直後の尿検査で尿中に精子が認められることでわかります。

糖尿病や脊髄損傷が要因になっていることもありますが、原因がわからないこともあります。膀胱頸部(ぼうこうけいぶ)を閉じる作用のある薬(抗うつ剤など)を服用することによって改善がみられるケースもあります。 改善できなかった場合には、マスターベーション後に膀胱内に射精された精液を回収し、その程度によって人工授精や体外受精などを行います。

精子死滅症(せいししめつしょう)

射精された精液の中の精子が動かず、そのほとんどが死んでしまっている場合、精子死滅症といいます。精子のほとんどが生きているが動いていない場合は、精子不動(せいしふどうしょう)症といいます。 もともと精子となる細胞自体に何らかの原因があるのではないかとされるケースと精巣上体の分泌液に異常があり精子が死んでしまうケースなどがありますが、原因はよくわかっていません。

何度か採精することで生きた精子がみつかることもあり、その精子で顕微授精を行うことで妊娠が期待できます。何度採精しても生きた精子が見つからない場合は、TESEなどを行うことで生きた精子が見つかるケースも多いようです。この精子で顕微授精することで妊娠が期待できます。

男性不妊は原因不明であることが6割以上

男性不妊原因
男性不妊は原因不明であることが6割以上

男性不妊の原因は、精子をつくる機能に問題があるものが大半を占めて います。また、その原因が特定できるものも少なく、原因不明であることが6割以上だといわれています。 精子の問題は複雑で、身体的な障害 (脊髄損傷など)、内科的疾患(糖尿病、 腎不全など)、過去の病歴(精巣ガンなどでの抗痙剤や放射線療法)や染色体異常(クラインフェルター症候群など) が男性不妊を引き起こしていることもあります。 精液検査や精密検査を行っても原因がわからない場合には全身状態、日々の生活、過去の病歴や手術歴など細かいところまでを確認することも必要になってきます。

ストレスが原因になっていることも

男性不妊の原因にはストレスが関係していることもあり、ストレスが蓄積されることが性生活や造精機能に関係してきますので、日々の生活、休日の過ごし方などの改善が功を奏することもあります。

原因不明の男性不妊でもあきらめないで

男性の場合、とくに問題がないように見えても、知らす知らすのうちに生殖能力が低下している場合があります。 とくに、忙しい生活を送っている人、不摂生な食生活を送っている人は要注意です。 原因不明の男性不妊は日々の不摂生が、性欲や精子の運動率・数に影響を与え、一時的に不妊の状態になっているかもしれません。まずは、睡眠や食事、生活スタイルをもう一度見直してみましよう。

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